SGRAレポート第31号「東アジアの経済統合:雁はまだ飛んでいるか」 Posted June 2, 2006 by imanishi
SGRAレポート第31号
第20回フォーラム講演録「東アジアの経済統合:雁はまだ飛んでいるか」渡辺利夫、平川均、トラン・ヴァン・トウ、範建亭、白寅秀、エンクバヤル・シャグダル、F.マキト、2006年2月20日発行
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【基調講演】「東アジア共同体への期待と不安」渡辺利夫(わたなべ・としお)拓殖大学学長
【ゲスト講演】「東アジアの雁行型工業化とベトナム」トラン・ヴァン・トウ 早稲田大学教授
【研究報告1】「中国家電産業の雁行型発展と日中分業」範 建亭(はん・けんてい)上海財経大学助教授、SGRA研究員
【研究報告2】「韓・中・日における分業構造の分析と展望:化学産業を中心として」白 寅秀(ペク・インス)韓国産業資源� �産業研究院副研究委員、SGRA研究員
【研究報告3】「モンゴルの経済発展と東北アジア諸国との経済関係」エンクバヤル・シャグダル 環日本海経済研究所研究員
【研究報告4】「共有型成長を可能にする雁行形態ダイナミクス:フィリピンの事例」フェルディナンド・マキト フィリピン・アジア太平洋大学研究助教授、SGRA研究員
【パネルディスカッション】
【総括】平川 均(ひらかわ・ひとし)名古屋大学教授、SGRA顧問
第4回共有型成長セミナー in マニラ報告 Posted May 16, 2006 by imanishi
SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ
マックス・マキト
2006年4月18日(火)午後2時から5時まで、マニラ市にあるアジア太平洋大学(UA&P)のPLDTホールにて、UA&P・SGRA日本研究ネットワークの第4回セミナーが開催された。セミナーの主な目的はEADN(東アジア開発ネットワーク)やSGRAの支援を受けて行ったフィリピンの経済特区についての研究報告であった。経済特区管理局(PEZA)の積極的な支援をいただいて、予想を上回る71名の参加者があった。
まず、アジア太平洋大学のヴィリイェガス常任理事より開会挨拶があり、効率性だけではなく所得分配も重視する開発戦略、いわゆる共有型成長が必要であることが強調された。
研究報告は経済� �部長のピーター・ユー教授が分析枠組みの説明をし、その後に、私が実証研究報告を行った。この研究は数年前から続けており、今年は対象期間と特区の範囲を拡大したが、以前の研究結果がこの拡大した研究でも立証された。つまり、雇用の安定性、現地調達の割合、日本経済との統合が高ければ高いほど輸出生産性が高まるという結果が得られたのである。要するに、私たちの研究結果が示しているのは、共有型成長を目指すことは経済特区の効率性に貢献するということである。
最後の報告として、トヨタ(フィリピン)産業関係部のジョセプ・ソッブルベガ部長より、トヨタ経済特区におけるクラスタ化の活動についての発表があった。クラスタ化は現地の中小企業の育成を目指す活動であり、私たちの研究で取り上げた現� �調達との関係が深い。このような活動にトヨタが力を入れていることは大歓迎である。セミナーの後、ジョセプ氏は、私たちの研究を聞いて初めて彼の活動のマクロ的な意味を把握できたと言ってくれた。今後もお互いに連絡を取り合うことになった。
その後、会場からの意見を聞いた。UA&P・SGRA日本研究ネットワークの将来的な活動として、NGOとしての第三者の視点を持ちながら、企業と政府の間の話し合いの場が提供できればと思う。最後に、今西淳子SGRA代表が、閉会の挨拶の中で、日本とフィリピンの友好50周年記念の活動のひとつとして、このセミナーを開催できたことに対し関係者の皆さんに感謝の意を伝えた。
F.マキト 「マニラレポート in 香港&広州」 Posted November 10, 2005 by imanishi
「マニラ・レポートin香港・広州 2006年11月1日―7日」
SGRA「グローバル化の中の日本の独自性」研究チームチーフ
フィリピンアジア太平洋大学研究助教授
マックス・マキト
一週間にわたった香港・広州での二つのフォーラムは結構気分転換になった。日本にいると、どうしても日中韓米に関する課題に埋まってしまうが、これらのフォーラムに参加したら、よりASEAN、そして一つの塊ではない中国がもっと見えてきたという気がした。
第1回のフォーラムは香港で開催され、EADN(東アジア開発ネットワーク)の研究助成を受賞した代表者がそれぞれの中間報告を行なった。香港、中国、日本、オーストラリア、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレイシア、ベトナム、カンボジアからの� ��究者(殆ど局長クラス)からコメントを受けた。このフォーラムでは、開発経済学か政治経済学の若手研究者を支援するというEADNの目的を達成するための主催者の懸命な努力が伺えた。フォーラムの間は殆ど缶詰状態だったので、参加者のそれぞれの母国の事情を知る機会が多かった。最近の動きをあまりファローしていなかったが、母国に近い地域の問題なので楽しく皆の話を聞いて参加できた。
フィリピンのUA&P(アジア太平洋大学)とSGRAの共同研究テーマは、フィリピンの経済特区を通していかに雁行形態ダイナミックスなどを利用して共有型成長を実現できるかということである。今年の夏のSGRAフォーラムin軽井沢で紹介した時、参加者の皆さんは前向きに受け入れてくれたが、香港のフォーラムではこのダイナミックスに� ��いて多少抵抗を感じた。幸いに、日本の円借款を扱っているJBIC(国際協力銀行)が、EADNの研究活動に対して関心を示しており、代表を二人も派遣していた。具体的に4つの研究テーマに対して、JBICは関心があるという。そのなかの二つ、つまり「産業化における政府の役割」と「輸出促進」とは我々の共同研究と非常に関係していると、同行したUA&Pのユー先生と私は気がついた。実際、JBICの代表の方々は、協
力的な態度で応対してくれたので、今後の可能性を探っている。
第2回のフォーラム(同時通訳つき)の初日は香港で開催されたが、その夜から広州に移動した。バスに乗ったらガイドが「皆さん、これから『一国二制度』を実感していただきます」と言うのでわくわくした。要するに、国内の「国境」のチェックを2回( 香港側と中国側)するし、中国人でも香港人でも許可がなければ「国境」を通れないということである。金曜日の夜で普段より人の移動が多いが、我々は運良く、楽々通ることができた。そこからは、殆ど高速道路だった。中国の高速道路の総距離はアメリカに匹敵するものになってきたとのことだ。
このフォーラムでは、中国の汎珠江デルタ+ASEANの構想を中心に討議した。この構想は「9+2+10」と呼ばれている。「9」は中国華南地域の9省・自治区(福建、江西、湖南、広東、広西、海南、四川、貴州、雲南)を指し、「2」は2の特別行政区(香港、澳門)を指し、「10」はASEANの加盟国を指す。つまり、9+10+2=10+1という構想で、ASEANと中国との経済連携を実現するための具体的な戦略である。テレビ取材� ��対象になったフォーラムの初日の発表者は、この汎珠江デルタを「竜の頭」と呼んでいた。東南アジアの参加者から「食べられちゃうよ」という反応もあったが、むしろ、「いかにこの竜の頭に上手く乗るか」が参加者の関心事だったといえよう。
第1回のフォーラムには、フィリピンから他に5人の社会科学者が参加していたが、第2回のフォーラムではなぜか私しか残らなかった。ASEANの参加者は皆積極的に発言していたのでフィリピン唯一の代表として私も最後に以下のように発言した。
様々な報告を聞くと、東アジアのこの構想のなかにもフィリピンはやはり出遅れているではないかという気がする。9+2+10よりは9+2+9(フィリピン抜き)だと受け止めている。ただ、皆さんには、私の母国がこの構想に対して� ��味がないと誤解しないようにお願いしたい。本当は大変関心を持っている。具体的な提案をさせていただくと、このフォーラムの一つの印象的な言葉は「GATEWAY」、つまり、ASEANと中国を繋ぐ「門」であるが、フィリピンの西側、ASEANの真中にいくつかの島があって、英語ではSPRATLEY ISLANDSと呼ばれている。当フォーラムでも重要とされたエネルギー(石油)と関係しているSPRATLEY ISLANDSは、中国を含めていくつかのASEAN諸国の奪い合い合戦の対象にもなっている。私は中国の字はあまりしらないが(12.5%中国の血がはいっているのに)、CRISIS(危機)という中国の字は
OPPORTUNITY(機会)の字と同じであるということが、フィリピンではよく知られている。例の島々が中国とASEAN諸国との「対立の源」から「協力の象徴」に変換すれば、我々は本物の9+2+10の方向にもっと早く進めるではないかという気がする。
会場は前向きにこの発言を受け入れてくれたようだった。私は、誰にも負けないほど積極的にSGRAの名刺を交換した。懇親会では「BROTHER」と私を呼んでくれた広東の研究所のかたと親しくなったので、今後、フィリピンを含めた共同活動の可能性を探っている。
東京に無事に帰ったら、更� ��UA&Pの共同研究チームの先生から嬉しいメールを受けた。我々の研究論文がEADNの傘下組織であるGDN(グローバル開発ネットワーク)のメダルの準決勝戦の候補に選ばれたのだ。この論文はEADNに提出したものの拡大版であり、UA&Pの代表者(プロジェクト・リーダーのテロソ博士)が一人、GDNの支援を受けて、2006年1月にST.PETERSBURGのGDN会議で派遣されることになった。EADNのフォーラムのようにできれば私も行こうと考えている。
(2005年11月10日)
レポート第21号「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」平川均、孫洌、他 Posted September 26, 2005 by imanishi
SGRAレポート第21号(PDF)
*PDFファイルですが、かなり思いのでダウンロードに時間がかかります
第3回日韓アジア未来フォーラム講演録「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」
---目次-------------
基調講演:「アジア共同体構築に向けての日本と韓国」
平川 均(日本/名古屋大学)
報告1:「東北アジアという地域と韓国:韓国は地域主義をどうすべきか」
孫 洌(韓国/中央大学)
報告2:「日・中・韓IT協力の政治経済」
金雄熙(韓国/仁荷大学)
報告3:「アジア開発銀行の独自性研究:その概観」
F.マキト(日本/名古屋大学)
報告4:「韓国外交のダイナミズムと日韓関係:公共材としての日韓関係の構築に向けて」
木宮正史(日本/東京大学)
報告5:「北東アジア共同体の構築と北朝鮮問題」
李元徳(韓国/国民大学)
質疑応答
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