2012年4月16日月曜日

Index


SGRAレポート第31号「東アジアの経済統合:雁はまだ飛んでいるか」 Posted June 2, 2006 by imanishi
SGRAレポート第31号
第20回フォーラム講演録「東アジアの経済統合:雁はまだ飛んでいるか」渡辺利夫、平川均、トラン・ヴァン・トウ、範建亭、白寅秀、エンクバヤル・シャグダル、F.マキト、2006年2月20日発行

---もくじ-----------------

【基調講演】「東アジア共同体への期待と不安」渡辺利夫(わたなべ・としお)拓殖大学学長

【ゲスト講演】「東アジアの雁行型工業化とベトナム」トラン・ヴァン・トウ 早稲田大学教授

【研究報告1】「中国家電産業の雁行型発展と日中分業」範 建亭(はん・けんてい)上海財経大学助教授、SGRA研究員

【研究報告2】「韓・中・日における分業構造の分析と展望:化学産業を中心として」白 寅秀(ペク・インス)韓国産業資源� �産業研究院副研究委員、SGRA研究員

【研究報告3】「モンゴルの経済発展と東北アジア諸国との経済関係」エンクバヤル・シャグダル 環日本海経済研究所研究員

【研究報告4】「共有型成長を可能にする雁行形態ダイナミクス:フィリピンの事例」フェルディナンド・マキト フィリピン・アジア太平洋大学研究助教授、SGRA研究員

【パネルディスカッション】

【総括】平川 均(ひらかわ・ひとし)名古屋大学教授、SGRA顧問

第4回共有型成長セミナー in マニラ報告 Posted May 16, 2006 by imanishi
SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チームチーフ
マックス・マキト

2006年4月18日(火)午後2時から5時まで、マニラ市にあるアジア太平洋大学(UA&P)のPLDTホールにて、UA&P・SGRA日本研究ネットワークの第4回セミナーが開催された。セミナーの主な目的はEADN(東アジア開発ネットワーク)やSGRAの支援を受けて行ったフィリピンの経済特区についての研究報告であった。経済特区管理局(PEZA)の積極的な支援をいただいて、予想を上回る71名の参加者があった。

まず、アジア太平洋大学のヴィリイェガス常任理事より開会挨拶があり、効率性だけではなく所得分配も重視する開発戦略、いわゆる共有型成長が必要であることが強調された。

研究報告は経済� �部長のピーター・ユー教授が分析枠組みの説明をし、その後に、私が実証研究報告を行った。この研究は数年前から続けており、今年は対象期間と特区の範囲を拡大したが、以前の研究結果がこの拡大した研究でも立証された。つまり、雇用の安定性、現地調達の割合、日本経済との統合が高ければ高いほど輸出生産性が高まるという結果が得られたのである。要するに、私たちの研究結果が示しているのは、共有型成長を目指すことは経済特区の効率性に貢献するということである。

最後の報告として、トヨタ(フィリピン)産業関係部のジョセプ・ソッブルベガ部長より、トヨタ経済特区におけるクラスタ化の活動についての発表があった。クラスタ化は現地の中小企業の育成を目指す活動であり、私たちの研究で取り上げた現� �調達との関係が深い。このような活動にトヨタが力を入れていることは大歓迎である。セミナーの後、ジョセプ氏は、私たちの研究を聞いて初めて彼の活動のマクロ的な意味を把握できたと言ってくれた。今後もお互いに連絡を取り合うことになった。

その後、会場からの意見を聞いた。UA&P・SGRA日本研究ネットワークの将来的な活動として、NGOとしての第三者の視点を持ちながら、企業と政府の間の話し合いの場が提供できればと思う。最後に、今西淳子SGRA代表が、閉会の挨拶の中で、日本とフィリピンの友好50周年記念の活動のひとつとして、このセミナーを開催できたことに対し関係者の皆さんに感謝の意を伝えた。

F.マキト 「マニラレポート in 香港&広州」 Posted November 10, 2005 by imanishi
「マニラ・レポートin香港・広州 2006年11月1日―7日」
SGRA「グローバル化の中の日本の独自性」研究チームチーフ
フィリピンアジア太平洋大学研究助教授
マックス・マキト

一週間にわたった香港・広州での二つのフォーラムは結構気分転換になった。日本にいると、どうしても日中韓米に関する課題に埋まってしまうが、これらのフォーラムに参加したら、よりASEAN、そして一つの塊ではない中国がもっと見えてきたという気がした。

第1回のフォーラムは香港で開催され、EADN(東アジア開発ネットワーク)の研究助成を受賞した代表者がそれぞれの中間報告を行なった。香港、中国、日本、オーストラリア、インドネシア、フィリピン、シンガポール、マレイシア、ベトナム、カンボジアからの� ��究者(殆ど局長クラス)からコメントを受けた。このフォーラムでは、開発経済学か政治経済学の若手研究者を支援するというEADNの目的を達成するための主催者の懸命な努力が伺えた。フォーラムの間は殆ど缶詰状態だったので、参加者のそれぞれの母国の事情を知る機会が多かった。最近の動きをあまりファローしていなかったが、母国に近い地域の問題なので楽しく皆の話を聞いて参加できた。

フィリピンのUA&P(アジア太平洋大学)とSGRAの共同研究テーマは、フィリピンの経済特区を通していかに雁行形態ダイナミックスなどを利用して共有型成長を実現できるかということである。今年の夏のSGRAフォーラムin軽井沢で紹介した時、参加者の皆さんは前向きに受け入れてくれたが、香港のフォーラムではこのダイナミックスに� ��いて多少抵抗を感じた。幸いに、日本の円借款を扱っているJBIC(国際協力銀行)が、EADNの研究活動に対して関心を示しており、代表を二人も派遣していた。具体的に4つの研究テーマに対して、JBICは関心があるという。そのなかの二つ、つまり「産業化における政府の役割」と「輸出促進」とは我々の共同研究と非常に関係していると、同行したUA&Pのユー先生と私は気がついた。実際、JBICの代表の方々は、協
力的な態度で応対してくれたので、今後の可能性を探っている。

第2回のフォーラム(同時通訳つき)の初日は香港で開催されたが、その夜から広州に移動した。バスに乗ったらガイドが「皆さん、これから『一国二制度』を実感していただきます」と言うのでわくわくした。要するに、国内の「国境」のチェックを2回( 香港側と中国側)するし、中国人でも香港人でも許可がなければ「国境」を通れないということである。金曜日の夜で普段より人の移動が多いが、我々は運良く、楽々通ることができた。そこからは、殆ど高速道路だった。中国の高速道路の総距離はアメリカに匹敵するものになってきたとのことだ。

このフォーラムでは、中国の汎珠江デルタ+ASEANの構想を中心に討議した。この構想は「9+2+10」と呼ばれている。「9」は中国華南地域の9省・自治区(福建、江西、湖南、広東、広西、海南、四川、貴州、雲南)を指し、「2」は2の特別行政区(香港、澳門)を指し、「10」はASEANの加盟国を指す。つまり、9+10+2=10+1という構想で、ASEANと中国との経済連携を実現するための具体的な戦略である。テレビ取材� ��対象になったフォーラムの初日の発表者は、この汎珠江デルタを「竜の頭」と呼んでいた。東南アジアの参加者から「食べられちゃうよ」という反応もあったが、むしろ、「いかにこの竜の頭に上手く乗るか」が参加者の関心事だったといえよう。

第1回のフォーラムには、フィリピンから他に5人の社会科学者が参加していたが、第2回のフォーラムではなぜか私しか残らなかった。ASEANの参加者は皆積極的に発言していたのでフィリピン唯一の代表として私も最後に以下のように発言した。

様々な報告を聞くと、東アジアのこの構想のなかにもフィリピンはやはり出遅れているではないかという気がする。9+2+10よりは9+2+9(フィリピン抜き)だと受け止めている。ただ、皆さんには、私の母国がこの構想に対して� ��味がないと誤解しないようにお願いしたい。本当は大変関心を持っている。具体的な提案をさせていただくと、このフォーラムの一つの印象的な言葉は「GATEWAY」、つまり、ASEANと中国を繋ぐ「門」であるが、フィリピンの西側、ASEANの真中にいくつかの島があって、英語ではSPRATLEY ISLANDSと呼ばれている。当フォーラムでも重要とされたエネルギー(石油)と関係しているSPRATLEY ISLANDSは、中国を含めていくつかのASEAN諸国の奪い合い合戦の対象にもなっている。私は中国の字はあまりしらないが(12.5%中国の血がはいっているのに)、CRISIS(危機)という中国の字は
OPPORTUNITY(機会)の字と同じであるということが、フィリピンではよく知られている。例の島々が中国とASEAN諸国との「対立の源」から「協力の象徴」に変換すれば、我々は本物の9+2+10の方向にもっと早く進めるではないかという気がする。

会場は前向きにこの発言を受け入れてくれたようだった。私は、誰にも負けないほど積極的にSGRAの名刺を交換した。懇親会では「BROTHER」と私を呼んでくれた広東の研究所のかたと親しくなったので、今後、フィリピンを含めた共同活動の可能性を探っている。

東京に無事に帰ったら、更� ��UA&Pの共同研究チームの先生から嬉しいメールを受けた。我々の研究論文がEADNの傘下組織であるGDN(グローバル開発ネットワーク)のメダルの準決勝戦の候補に選ばれたのだ。この論文はEADNに提出したものの拡大版であり、UA&Pの代表者(プロジェクト・リーダーのテロソ博士)が一人、GDNの支援を受けて、2006年1月にST.PETERSBURGのGDN会議で派遣されることになった。EADNのフォーラムのようにできれば私も行こうと考えている。
(2005年11月10日)

レポート第21号「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」平川均、孫洌、他 Posted September 26, 2005 by imanishi
SGRAレポート第21号(PDF)
*PDFファイルですが、かなり思いのでダウンロードに時間がかかります

第3回日韓アジア未来フォーラム講演録「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」

---目次-------------

基調講演:「アジア共同体構築に向けての日本と韓国」
平川 均(日本/名古屋大学)

報告1:「東北アジアという地域と韓国:韓国は地域主義をどうすべきか」
孫 洌(韓国/中央大学)

報告2:「日・中・韓IT協力の政治経済」
金雄熙(韓国/仁荷大学)

報告3:「アジア開発銀行の独自性研究:その概観」
F.マキト(日本/名古屋大学)

報告4:「韓国外交のダイナミズムと日韓関係:公共材としての日韓関係の構築に向けて」
木宮正史(日本/東京大学)

報告5:「北東アジア共同体の構築と北朝鮮問題」
李元徳(韓国/国民大学)

質疑応答


どのようにケベック州は、フランスの文化遺産を維持しましたか?

第20回SGRAフォーラムin 軽井沢「東アジアの経済統合:雁はまだ飛んでいるか」報告 Posted September 21, 2005 by imanishi
F.マキト
SGRA「日本の独自性」研究チームチーフ
フィリピン・アジア太平洋大学研究助教授

渡り鳥の飛ぶ季節にはまだ早いけれども、「東アジアの経済統合:雁はまだ飛んでいるか」というテーマで、20回目のSGRAフォーラムが、2005年7月23日に、鹿島建設軽井沢研修センター会議室で開催されました。

まず、開催の趣旨説明のなかで、私は、日本で生み出された開発経済学の「雁行形態ダイナミックス」理論を、SGRAの担当研究チームが取り組んでいる研究課題「日本の独自性」に関連する経済学として位置づけました。そして、雁行形態論の理念・実行手段・結果を参考とする日本独自の開発経済学についての共同研究を、フォーラムの参加者に提案しました。

さらに、経済学者� �松要氏が提唱した雁行形態ダイナミックス理論の3つのパターンを簡単に説明しました。第1パターンは基本形態であり、ある産業が輸入→輸入代替(現地生産)→輸出→逆輸入というように発展します。第2パターンは副次形態1であり、ある国の産業の高度化が図れます。第3パターンは副次形態2であり、先発国の産業の一部の産業が後発国へ進出します。

趣旨説明の後半では、名古屋大学の平川均教授(SGRA顧問)が、「今あえて『雁はまだ飛んでいるか』を議論する意義」について語られました。東アジアを囲む環境は劇的な変化を遂げつつありますが、特に次の4要素が強調されました。すなわち、(1)中国を「磁場」とする統合化の進展、(2)金融協力の進展、(3)FTAを通じた経済統合の深化、(4)地域協� ��から「東アジア共同体」への議論の転換です。環境の変化に応じる体制が不十分という懸念を抱きながらも、雁行形態によるデ・ファクト(事実上)の統合は既に進んでおり、今後、このダイナミックスが継続するのか、ポスト雁行形態か新雁行形態の時代が到来するのか、あるいは到来すべき
なのかを、この変革の時代において議論すべきであると提案されました。

基調講演をお引き受けくださった拓殖大学の渡辺利夫学長は、東アジアのデ・ファクトの経済統合についての興味深い最近の動きを取り上げられました。貿易の面において、日本を含む東アジアの世界経済に占める存在は高まりつつあります。渡辺教授ご自身が命名された「中国のアジア化―"Asianizing" China」でも象徴されるように、東アジアの域内貿易や海外直接投資の依存度が急増しています。EUとNAFTAに匹敵する勢いです。しかし、北東アジアには、政治的な難題があるため、「地域共同体」までの発展の可能性は低いと主張されました。

一方、早稲田大学のトラン・ヴァン・トウ教授は、 22ページにも及ぶフル・ペーパーで、東アジアを意識するベトナムの視点から、雁行形態ダイナミックスを中心に検証されました。東アジア地域では、雁行形態の工業化が続いているが、国の資本・労働などの資源の状況が似てきており、分業の中身が従来と異なってきています。中国経済の台頭にいかに対応するかということが、ベトナムにとって大きな挑戦となっています。そのために、貿易や海外投資の面においても雁行形態ダイナミックスを利用するべきだという分析を発表されました。

上海財経大学の範建亭さん(SGRA研究員)は、雁行形態ダイナミックスの分析手法によって、中国の家電産業を分析しました。その結果は、渡辺教授が指摘された、中国の産業の海外直接投資への高い依存度の具体的な事例として考え� ��ことができます。韓国産業研究院(KIET)の白寅秀さん(SGRA研究員)も雁行形態ダイナミックスの手法で、韓国の化学産業をとりあげ、中国や日本と関連させる分析を行いましたが、日本・韓国・中国の三カ国が絡む雁行形態戦略が綺麗に描かれていました。環日本海経済研究所(ERINA)のエンクバヤル・シャグダルさんは、東北アジアの三カ国へのモンゴルの依存度が高まりつつあると指摘しました。特に、1990年から始めた市場経済への平和的移行で、貿易、海外投資、観光においてモンゴルと東北アジアとの経済関係が深まっています。最後に、私が、フィリピンの経済特区に雁行形態ダイナミックスを適用することによって、フィリピン全体に共有型成長を達成するための分析枠組みを説明しました。

後半の パネル・ディスカッションでは、総合研究開発機構(NIRA)の李鋼哲さん(SGRA研究員)が進行役を務め、東アジア経済統合と雁行形態ダイナミックスについて、パネリストから追加意見を伺ったあと、会場からの質問や発言を受け付けました。とくに印象的だったのは、北東アジアにおいて雁行形態型開発があまり知られていないという指摘に対して、トラン教授が「ベトナムでは皆知っている」という堂々とした反応があったことでした。あとでトラン夫人からお聞きしたのは、トラン教授ご自身が雁行形態理論の発信源だったそうです。トラン教授まではとても及ばないが、私も、フィリピンにおいて同じ存在になれればと思うようになりました。パネル・ディスカッションの議論は面白い反面、もう少し整理が必要だとい� ��印象も受けました。とてもここで纏められるものではないので、詳細はSGRAレポートに譲りたいと思います。

代わりに、主催者の不手際で当日に実現できなかったことを2点お伝えします。まず、パネル・ディスカッションでトラン教授から2つの鋭いご指摘がありましたが、その2つ目は私に向けたものだったのに、ちゃんと答える時間がありませんでした。トラン教授は、私の「共有型成長」の分析が、「成長」に偏っており、「共有型」の方があまり強調されていないと指摘されました。真に先生のおっしゃる通りです。研究はまだ進行中なので、後日、先生にちゃんとした答えを報告できるように頑張ります。 
 
もう一つ大変残念だったのは、アンケート結果の報告ができなかったことです。食事前に提出して いただいたアンケートを食事中に集計して、食後のセッションでお見せする予定でした。SGRAのチームメートのナポレオンさん(ヤマタケ研究所)がプログラムを作って、私と一緒に、夕食をとらずにがんばって集計したのですが、その後の手違いがあって、時間切れでお披露目できませんでした。そこで、この場を借りてご報告したいと思います。

回答者の国別プロフィールは中国(36%)、日本(32%)、韓国(13%)、その他(19%)になりました。雁行形態の役割についての5番目の質問に対する回答は「凄く重要」・「やや重要」が大半でした。実は、アンケートの設計時、この質問に対する答えが前の2、3、4番目の質問と一致(あるいは矛盾)しているかどうかチェックできる仕組みにしました。結果をみると「一� ��している」という結論になると思います。2番目の質問「日本が発展途上国からの安い物を輸入することの是非」に対する回答は「やや賛成」や「凄く賛成」というのが大半でした。3番目の質問「日本の空洞化の是非」に対する回答も同様でした。4番目の質問「日本の次世代産業への転換の是非」に対する回答は「凄く遅い」や「やや遅い」というのが大半でした。

アンケート集計の詳細は下記URLここをご覧ください。

最後に、軽井沢で休暇中だった王毅駐日中国大使が、フォーラムの途中に立ち寄ってくださり、「日本という雁も、中国という雁も、一緒に飛んでいきましょう」というご挨拶をしてくださるというビッグ・サプライズがあり、参加者全員の大きな励みとなったことを付け加えさせていただきます。

尚、SGRA運営委員の全振煥さん(鹿島建設技術研究所)が撮った写真を集めたアルバムを、ここからご覧いただけます。

F.マキト「マニラ・レポート2005冬」 Posted January 15, 2005 by imanishi
SGRA運営委員で、「日本の独自性」研究チームチーフのマキトさんより、この冬のマニラでの活動報告が届きましたので転送させていただきます。4月20日(水)にフィリピンのカビテ経済特区でセミナー開催予定ですので、お知り合いの方にご連絡いただけますと幸いです。案内状は下記ウェブサイトからダウンロードしてください。

www.aisf.or.jp/sgra/uapsgra/invitation1.pdf

-------------------------------------------------

マニラ・レポート 2005年冬
F.マキト(SGRA「日本の独自性」研究チーフ)

 マニラが一番賑やかになるクリスマスとお正月をフィリピンの家族と過ごすため、そしてフィリピンのアジア太平洋大学(UA&P)とSGRAの日本研究ネットワークが主催する第3回「共有された成長セ� �ナー」の準備のため、12月9日から1ヶ月ほど帰国した。今度のセミナーは4月20日(水)午後1時半から5時半までカビテ州の経済特区内で開催することになった。前回と同様、経済特区にある日系企業と協力しながら、共有された成長型の経済発展をフィリピンにいかに実現するか、ということが主なテーマである。今度セミナーは前回と違うところがいくつかあるが、一番違うのは開催場所である。前2回のセミナーはマニラ市内のUA&Pの会議室で開
催されたが、今度は現場により近いところで開くことにした。カビテ経済特区(CEZ)は、私の運転でマニラから南へ2時間ぐらいのところに位置する。

 セミナーの運営や研究以外の準備はSGRA側が担当している。そればかりでなく、実質的には、SGRAがこのセ� �ナーの実施者ということができるだろう。この使命をしっかり成し遂げるために、今西SGRA代表の積極的支援を受けて、SGRAフィリピン(有限会社)を設立した。今回の私の滞在期間中は、現地スタッフと一緒に、4月のセミナーで中心的な役割を果たす方々(下記参照)とできるだけ多く会うことにした。まず第一回セミナーから積極的に参加していただいたP-IMESの社長や役員の方々とカビテ州にある工場で会談した。社長のご紹介により、SAN TECHNOLOGIES社長(兼カビテ経済特区投資家協会会長)も会議に出席してくださった(私が訪問の「エネルギー」節約してくださるために!)。そしてセミナーの開会挨拶をしていただくことになった。その後、CEZのフィリピン経済特区当局の管理者と会談し、国営と民間特区の違いなどがわかるようになった(ちなみに、CEZは国営経済特区である)。フィリピン日本人商工会議所も訪問することができ、その月刊ニュースレターにセミナーの案内状(日本語と英語版)を掲載していただくことになった。いつもお世話になっているUA&Pの副総長のVillegas先生の推薦でフィリピン通産省の副大臣(以前、UA&Pでの私の上司でもあった)にも面会でき、セミナーのもう一つの開会挨拶を引き受けてくださった。日比自由貿易協定(FTA)交渉で中心 的な役割を果たした方で、日比経済関係の更なる発展を望んでいる私たちと共通な目標を持っていらっしゃる方で
ある。


オーストラリアの民主主義は何ですか?

 以前のセミナーに参加していただいたPCI社長ともお会いした。PCIとはインフラ関係の共同コンサル事業を検討中である。HONDA CARS PHILIPPINESの副社長ともお会いした。HONDAの工場は別の州(ラグナ州)の経済特区にある。今度のカビテ州のセミナーが上手くいけば、第4回目のセミナーはラグナ州にするという予定をたてた。在比日本大使館の研究員の方ともお会いすることができた。フィリピン人日本研究者ネットワークの担当者である。生憎、今年度はスケジュールを上手く調整できなかったが、今後のシンポジウムなどにUA&P/SGRA日本研究ネットワークが参加するよう、お互いに連絡しあうことに決めた。「これからはアジアの時代」という大使館員の言葉は印象的であった。

 最後に、ASIA UNITED BANK(AUB)の副社長とカビテ州の支店長とその営業チームと会談して、4月のセミナーのための今後営業活動などを引き受けていただくことになった。長期的かつ特別な関係を育てるという意味で、SGRAフィリピンのメイン・バンクが誕生した。

 以上のように、大変実りの多い1ヶ月であった。皆さんから貴重なアドバイスとご支援をいただき、SGRAの一員として心から感謝している。そして、これだけの協力を得たのだから、4月のセミナーは必ず成功させることができると確信している。

------------------------------------
この場を借りて、下記の方々へ衷心より感謝申し上げます。

1. Department of Trade and Industry
1.1. Hon. Thomas Aquino, Undersecretary

2. Cavite Economic Zone, Philippine Economic Zone Authority
2.1. Atty. Dante Quindoza, Zone Administrator

3. P.IMES Corporation (Cavite Economic Zone)
3.1. Mr. Masaaki Mitsuhashi, President/CEO
3.2. Ms. Florafe Bantayan, Managing Director/CFO
3.3. Mr. Shinsuke Kubota, Director HR & Purchasing
3.4. Mr. Aniano Matabuena, Jr., Director Quality, Site Services &
Logistics
3.5. Mr. Dante Garcia, Manager Finance & Accounting

4. San Technology, Inc. (Cavite Economic Zone)
4.1. Mr. Nobuo Fujii, President (also President of the Cavite Economic
Zone Investors Association)

5. Honda Cars Philippines, Inc. (Laguna Technopark)
5.1. Mr. Alfredo Magpayo, VP-Administration Division

6. PCI Philippines
6.1. Mr. Junichiro Motoyama, President & CEO

7. The Japanese Chamber of Commerce & Industry of the Philippines, Inc.
7.1. Mr. Tetsuya Matsuoka, Secretary-General

8. Japan Information and Culture Center, Japanese Embassy in the
Philippines
8.1. Ms. Hanayo Nagaoka, Researcher/Adviser

9. Asia United Bank
9.1.1. Mr. Rojo Fernandez, Senior Vice President
9.1.2. Ms. Jen Calabon, Branch Head, Imus Branch
9.1.3. Mr. Arvie Valeros, Sales Officer, Imus Branch
9.1.4. Mr. Artrie Arambulo, Sales Officer, Alabang Commercial Center
9.1.5. Ms. Roselle Lacson, Sales Officer, Alabang Commercial Center
9.1.6. Mr. Allan Penarubia, Sales Officer, Lucena City
9.1.7. Mr. Anthony Contreras Technical Sales Office

10. University of Asia and the Pacific
10.1. Dr. Bernard Villegas, Vice President
10.2. Dr. Peter Lee U (Director, Industrial Economics Program)

マニラのUA&P−SGRAセミナー報告 Posted March 31, 2004 by imanishi
昨年のフィリピン・アジア太平洋大学(UA&P)とSGRAの共同研究(日比自由貿易協定の準備調査−フィリピン政府宛の内部報告)に続いて、最初の一般公開の共同事業となった経済セミナーが、2004年3月26日(金)午後1時半から5時まで、マニラ中心部にあるUA&PのPLDT会議室で開催された。テーマは「共有された成長を目指せ:フィリピン経済特区日系企業を通して効率性と平等性の向上を探る」。SGRA側は今西淳子代表とF.マキト研究員とSGRAフィリピンのボランティアスタッフが5名参加した。

開会挨拶で今西代表がSGRAやマキト研究員や渥美財団を紹介してから、在日フィリピン人についてのデータを紹介した。日本にはフィリピン人が大勢居るのに留学生は少ない。英語ができるしアメリカ文化にも親しみをもっているの� �留学先がほとんど英米になるであろう。セミナーの前、UA&Pのラウンジでのランチで「日本への留学したいフィリピンの若者はいるが、どうやっていけばいいかわからない」という指摘があったが、それが十分な理由かどうか、いまだに疑問に思う。

その後、4名のエコノミストが30分間ずつ発表した。最初に、SGRAとの調整役を果たしてくれた、UA&P産業研究科のディレクター、ピーター・ユー博士がフィリピンの電子産業と自動車産業について発表した。電子産業より自動車産業のほうが待遇的政策の対象になっているにもかかわらず、電子産業のほうが輸出によって外貨を多く稼いでいるという問題提起をした。

次に、マキト博士がセミナーのテーマ中心でもあるフィリピン経済特区について発表した。特区はフィリピンの二 つのダイナミックスが収斂していると指摘してから22ヶ所の特区を比較した。予備調査によれば、トヨタに任せている特区は一番効率的であることが判明したという。最後に、富の配分の平等化がフィリピンの地方に広がっていることがわかるが、これは成長とともに自動的に発生したものではないことを指摘した。

その次に、UA&Pの副総長のベルナルド・ビリエガス博士はフィリピンの今後の5年間の展望について語った。今年の5月の大統領選挙で誰が大統領になっても、いつものようにフィリピンの政治は無視すれば良い、という楽観的な見方を明らかにした。企業がリスク管理をきちんと行えば、自分の強みと弱みを認識して置かれた環境の脅威と機会に巧みに対応できるはずだ。(フィリピンの難しい環境でも、トヨタは効� ��的なビジネスができることが比較分析でわかったように。)将来性のあるフィリピン産業を取り上げながら、ASEANと中国の経済関係が今後さらに強くなることを予想した。

15分間の休憩の後、UA&Pのビック・アボラ教授が中国ファクターについて発表した。ビリエガス博士同様、中国はフィリピンにとって脅威よりは機会であることを強調した。対中国のフィリピンの輸出と対フィリピンの中国の輸出の品目を詳細に分析した結果、フィリピンと中国とが競争する品目があまりないことが判明した。この品目データの時系列的な変化をみても、同じ結果が得られるという。
最後に、オープン・フォーラムでセミナーの参加者との質疑応答があった。経済特区に入っている日系企業の日本人とフィリピン人から、それぞれの見方を分か ち合ってもらって、今後の研究への貴重な示唆をいただいた。フィリピンの経済特区管理局からの参加者(政策企画部)には、引き続きご協力いただくよう呼びかけてもらった。

参加者からのアンケートによると、セミナーについての好意的な反応が多く、次回のセミナーにも招いてもらいたいという回答が圧倒的に多かった。セミナーでの発表は英語で行われたが、それと同時に日本語のスライドと配布資料を使った。これが自分か自分の組織の日本人にとって役に立つという回答が得られた。この方法とこのテーマでUA&P−SGRA共同セミナーをまた開催しようという励みになった。

(文責:F.マキト)

マキト「トヨタ・マジック」 Posted February 27, 2004 by imanishi
日本経済が混乱している中、トヨタ自動車は従業員や下請け会社を殆ど保ったまま、相次いで史上最高の利益を生み出している。この数年、トヨタに関する本が相次いで出版された。確かに日本企業が圧倒的な存在だった80年代には、日本型経営の強さを解説する本がたくさんあった。バブルが弾け日本企業がばたばた倒れた「失われた10年間」には、そのような本も泡のように消えていった。その代わり、日本型経営の弱さばかりを協調する書物が一般読者に提供された。そのような本がモデルにするのは外国企業ばかりであった。「日本型経営システムはもう古い」「世界に通用しない」「変革に対応できない」などと批判された。なぜ、このような学者や評論家達は、既存の日本企業システムの強いところを参考� ��せず、わざわざ国境を越えて全く違う文化と環境の中で成功したものを押し付けるのだろうかと当時も不思議に思っていた。参考にできる材料は、日本国内にも豊富にあったのに。

昨年名古屋大学に赴任中、豊田市のトヨタの工場を訪問する機会があった。名古屋にいる外国人の教員たちや研究員たちを対象にした見学会だった。見学の一部ではトヨタのベテラン社員たちと出会えた。ものづくりの説明で彼らの目が輝いた。質疑応答で同行した先生の一人は、「トヨタのマルチ・フラットホーム方式(色々な車種が一つの工場で作るシステム)は非常に難しい生産方式のようだが、いつできあがったのか」と聞いた。従業員たちはちょっと困ったような顔したが、結局、社員の一人が「はっきりわからない。私はもう30年間ぐらい� �の会社に勤めているが、入社した時は、もうこの方式がすでにできていた」と答えた。質問者は驚きの顔を隠せなかった。

環境問題の取り込みについても話し合った。トヨタは京都議定書に定められた排出ガス削減目標を達成すべく取り組みを順調に進めているという。同行した先生は、「これに関して日本政府からの圧力が掛かっているのか」と質問した。「それはない」という返事に私はすぐコメントと質問した。「PRIUSの鰻上りの売上でわかるように、環境に関心を持つのは良き企業市民の行動だけではなく、商売にも良いことだ」(Concern for the environment is NOT ONLY GOOD CORPORATE CITIZENSHIP but also GOOD FOR BUSINESS)。高めなリサイクル率目標という私の質問に対しては「トヨタはこの分野ではトップの欧州の企業とそれほど差がない」という答えだった。

興味深いことに、私の進めているフィリピンの経済特区に進出している日系企業の調査の中で、トヨタに任されている特区は一番効率が高いという結果がでた。事業環境が厳しいと言われているフィリピンでも、トヨタはちゃんと実績をだせる。そういえば、トヨタのトップになった奥田碩氏は、フィリピントヨタの社長も務められた。フィリピン経済と日比関係の更なる発展のためにも、トヨタマジックをさらに理解したいと思う。環境に優しい会社においてだけでなく、日本が経験した「共有された成長」においてもその担い手にもなった日系企業として、トヨタや発展途上国に進� ��してくれている他の日系企業は、良き企業市民としての役割を十分に果たしている。21世紀に入って、企業は利益を得ることはもちろん、社会の一員としての役割も果たさないといけない。「共有された成長」の実現に貢献することは、空気を綺麗にするのと同じくらい立派な社会貢献といえよう。

李 鋼哲(AAN)「中国『東北振興』に好機 」 Posted February 16, 2004 by imanishi
中国政府が昨夏以来本腰を入れだした「東北振興」政策が、内外の注目を集めている。


私たちジョン·キャリーを助ける私たちは、イラクで立ち往生している

遼寧、吉林、黒竜江の3省からなる東北地域は、新生中国の重工業の屋台骨だった。しかし、ここ十数年は改革開放政策で飛躍的に市場経済へ転換した沿海部に比べて、地盤沈下が著しい。大型国有企業を中心に設備の老朽化が進み、多くの債務と失業者を抱える「問題児」になってしまった。この「東北現象」と、沿海部に取り残された内陸部の「東西格差」にどう対処するかが政権の最大課題といえる。

全文はAANホームページをご覧ください。

李 鋼哲(リ・ガンゼ)
総合開発研究機構(NIRA)研究員(中国)
2004年2月16日朝日新聞朝刊に掲載

マキト「マニラ・レポート(2003年冬)」 Posted January 26, 2004 by imanishi
マニラ・レポート(2003年冬)

今回は、フィリピンのアジア太平洋大学(UAP)とSGRAとの共同研究を中心とした滞在でした。

まず、UAPのPETER LEE U助教授と一緒に、ホンダフィリピンの下請け会社を調査して、今年から始まるフィリピンと日本とのFTA(自由貿易)交渉のための準備調査報告を執筆しました。

次に、フィリピン経済特区当局と交渉した結果、準備調査の補足的なデータとして、特区に入っている日系企業のデータへアクセスすることができました。企業の名前を公表せず、収集したデータのファイルのコピーを当局にも渡すという条件で許可されました。ほこりをかぶって忘れられ、最後には処分されたデータが救われたということです。SGRA実行委員� ��にご承認いただき、その研究費を使って、200日を越す計画で、データ保存作業が現在でも続いています。NHKの世界遺産をDIGITALで保存するプロジェクトのように、当局のデータをSSCANしてDIGITAL化するこの作業によって、さらなる分析が進め、日比両側のためにお役にたてればと思っています。経済特区に入っている日系企業の本社は、日本の「共有された成長」に大きく貢献しました。この日系企業の特徴的な機能が、今後のフィリピンに発揮されるように努力していきたいと思っています。

第3に、UAPとSGRAの初めての一般公開プロジェクトとして、3月に、「JAPANESE COMPANIES IN THE SPECIAL ECONOMIC ZONES: ENHANCING EFFICIENCY AND EQUITY(経済特区における日系企業:効率と所得分配の改善)」というようなテーマのWORKSHOPを企画しています。WORKSHOPでは、部分的に日本語の発表もいれるようにしようかと考えています。

フェルディナンド・マキト
SGRA「日本の独自性」研究チーフ
フィリピンアジア太平洋大学研究助教授
2004年1月24日投稿

第3回日韓アジア未来フォーラム Posted January 22, 2004 by imanishi
第3回日韓未来アジアフォーラム「アジア協同体にむけた日韓の役割」

平川均、孫洌、金雄熙、F.マキト、木宮正史、李元徳
2003年10月21日〜22日
未来人力研究院研修館会議室(韓国陽平)

第3回日韓アジア未来フォーラム「アジア共同体構築に向けての日本および韓国の役割について」がソウル市から車で約2時間の陽平(ヤンピョン)で10月21日と22日に開催された。このフォーラムは、韓国未来人力研究院/21世紀日本研究グループと、渥美財団/SGRAの共同事業で、毎年相互に訪問し、フォーラムを開催している。陽平は、日本でいえば軽井沢のような町で、その山奥に今回のホストの未来人力研究院の研修館があり、雨あがりで霧に覆われた山を眺めながらフォーラムの前半が始まった。

今回のフォーラムのSGRA側の担当「グローバル化のなかの日本の独自性」研究チームの顧問、名古屋大学の平川均教授が東アジア全体の観点からフォーラムのテーマについて基調講演を行った。北東アジアの課題から東アジア(北東アジア+ASEAN)の課題の時代への移行は可能であるかどうか、東アジアのアイデンティティについて検討し、日本に対しては、大東亜共栄圏論を越える東アジア概念の構築とその実践という課題を、韓国に対してはASEANとの関係強化と東アジア共同体論の推進者という役割を指摘した。

韓国中央大学の孫洌氏は「東アジア・東北アジア経済共同体構想と韓国」について発表した。韓国が「東北アジア経済中心」を目指していくうえで、もっとも重要なのは、韓国が考えている空間的な枠組みに日本と� ��国をどうやって組み入れるかということだと指摘した。SGRA研究員で仁荷大学の金雄熙氏は「日・中・韓IT協力の政治経済」について発表した。東北アジアにおいてITの分野で韓国が推進的な役割を果たし、世界のITリーダーである米国に国際標準が取られないように、東北アジア3カ国間の協力体制の構築を訴えた。SGRA研究員で名古屋大学客員研究員のF.マキト氏は、フォーラムで初めての東南アジアからの参加者として「アジア開発銀行の独自性研究:その概観」について発表した。東アジアで多様性を維持する日本の役割・責任を、アジア開発銀行を事例として取り上げた。

ここで第1日目のフォーラムは終了したが、その後も、陽平の寒い夜にもかかわらず、韓国の焼肉バーベキューとSPIRITで体を温めながら、 日本からの留学生を含む学生達も一緒に、遅くまで議論がはずんだ。

翌朝は、韓国風の朝食の後、今回のゲスト講師の東京大学の木宮正史氏が「韓国外交のダイナミスムと日韓関係:公共材としての日韓関係の構築に向けて」について発表した。東北アジアが共有する様々な分野において市場を超えるような問題に対応できる日韓協力の必要性と難点を指摘した。最後に、21世紀日本研究グループの代表で、韓国国民大学の李元徳氏が「北東アジア共同体の構築と北朝鮮問題」について発表した。この地域の安全保障において最重要課題である北朝鮮、それに対する6カ国協議を評価し、これからの展開について検証した。その後、参加者からコメントや感想が寄せられ、フォーラムは午前11時半に終了した。

来年の日韓ア� �ア未来フォーラムは、「東アジアの安全保障と世界平和」研究チームが担当し、来年の7月に軽井沢で開催する予定である。

(文責:F.マキト)

マニラ・レポート(2003年夏) Posted January 22, 2004 by imanishi
夏休みを利用して、一時帰国した。

帰国早々、7月27日に、マニラのビジスネス街マカティで軍兵士の反乱事件が起きた。幸いなことに、反乱兵士たちの思惑ははずれ、一般市民の支持を全く得ることができず、一日のうちに無血で事件は終了した。反乱兵士たちは、フィリピン軍内の汚職を訴えようとしたが、彼らに武器の使用権を認めた国民の信頼を裏切った結果になったと私は思う。正当な主張があるのならば、とりわけ自分の命を掛けるぐらいならば、平和的ルートを通して訴えを表明する方法は他にいくらでもある。国家を危機に晒し、一般市民に武器を向けずに済むはずだ。今回の反乱事件の計画者を厳しく裁いてもらいたい。この事件による経済影響を心配したが、フィリピンのアジア太平洋大学(U AP)の発表によれば、フィリピンが様々な危機から受ける打撃は毎回減ってきているようである。フィリピン国民が、だんだん危機への対応に慣れてきたと考えられている。

今回のマニラ訪問の後半には、SGRA研究チームの顧問をお引き受けいただいている名古屋大学の平川均教授が同行してくださり、充実した調査ができた。反乱事件が起きたので心配したが、先生は予定通り来比してくださった。日本貿易振興会(JETRO)を通じて、次の4社を訪問した。JETROマニラの白石薫さん(Director)が4社の訪問に同行してくださったが、「フィリピンの将来がなければ、私の将来もない」という彼の言葉がとても印象的だった。(このような日本人がもうちょっと増えてほしいですね)

4社で、暖かく受け入れて� �れたのは次の方々である。この場を借りて、改めて感謝の意を述べたい(訪問順)。今回の調査は、平川先生の特別依頼もあって、工場を見学してきた。現場の貴重な意見を詳しく聞かせていただき、大変勉強になった。

小藤田 洋成 ASAHI GLASS PHILIPPINES、EXECUTIVE VICE PRES.
石井 明 SANYO PLASTIC PHILIPPINES、INC.、PRES.
SAKAMOTO HITOSHI、ENOMOTO PHIL. MFG.、SENIOR VICE PRES.
YAMAJI TADASHI、 P.IMES CORPORATION, PRES.
WAKABAYASHI SHUJI、 P.IMES CORPORATION、DIRECTOR
CESAR A. MORANA、P.IMES CORPORATION、MANAGER

4社訪問以外に、今年5月に調査したトヨタ・フィリピンの田端社長と、ホンダのALFREDO MAGPAYO、AVPと、アジア太平洋大学(UAP)のEXECUTIVE LOUNGEでそれぞれ朝食とランチの会議を行った。田端社長は、その場で携帯電話か ら、フィリピンにあるトヨタの部品下請け会社であるTOYOTA AUTO PARTSの社長とアポイントをとってくださった。そのおかげで次の方々にもお会いしたので、お礼を申し上げたい。

三宅 譲治 TOYOTA AUTOPARTS PHIL.、INC. PRES.
矢澤 文希 TOYOTA AUTOPARTS PHIL., INC. DIRECTOR
木村 和彦 TOYOTA AUTOPARTS PHIL., INC. DIRECTOR

以上の会議は、フィリピンのアジア太平洋大学(UAP)のPETER U先生が手伝ってくださった。今後も、引き続き、この方々と連絡して、調査を進める予定である。

平川先生の特別依頼で、日本大使館のSAKUMA HIROMICHIさん(FINANCIAL 
ATTACHE ATTY.)と意見交換した。先生も私もSGRAのことをPRし、去年の軽井沢フォーラムのレポート(英語と日本語版)を大使館においていただくようお願いし� �。

今回の調査はフィリピン開発研究所の助成金によって行われた。調査の最終目的はフィリピンの工業製品の対日輸出戦略を立案することである。調査の過程は次のようになっている。第1段階は、中長期的に日本へ輸出可能な製品、いわゆる生産計画の特定。第2段階は、その生産計画の構造的関係の根拠の分析。第3段階はその生産計画の構造的根拠のインセンティブ構造の分析。今年の12月ごろに最終提案書を提出する予定である。

今回の訪問で、大・中企業の生産計画の大枠を把握できたが、やはり、小企業のほうは、大企業に頼る部分が大きく、生産計画を自ら作成しないというのが基本方針のようである。ただ、小企業といっても、高い技術でバリバリ輸出しており、ここからも輸出戦略を立てるための貴重な情報� �得られないわけはないので、引き続き調査の対象としたい。

8月19日に成田に戻り、翌日の始発の新幹線で名古屋に向かった。これから3ヶ月半、平川先生のご指導のもと、SGRA研究チームの仲間の李鋼哲さんと一緒に、客員研究員としてお世話になる。名古屋に近づくと、新幹線の窓から工場団地がよく見かけられた。平川先生によれば、名古屋大学は、東アジアの発展の原動力とも言える「雁行形態開発」という発想の発祥地ということだ。ASEANと日本の協力関係の更なる進展という私の期待への可能性を探るために、日本の「ものづくり」の心臓部への旅がはじまった。


フェルディナンド・マキト
SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チーフ
2003年8月28日投稿

おめでとう フィリピン・プロジェクト Posted January 22, 2004 by imanishi
SGRA「グローバル化のなかの日本の独自性」研究チームが、フィリピンのアジア太平洋大学と共同で進めている在比日系企業調査のプロジェクトに対して、フィリピン開発研究所からの助成が決定した。研究提案は「Formulating a Medium- to Long-Term Strategy for Exports of Manufactured Goods from the Philippines to Japan under a FTA with Japan: A Survey of Japanese Corporations in the Philippines 日比間の自由貿易協定において、フィリピンによる対日本製造品輸出をめぐる中長的戦略の立案:在比の日系企業の調査」というもので、日本企業と協力していかにフィリピンの経済発展と日比関係を進めるかということが、このプロジェクトの基本目的である。日本が世界に向けて可能であると示した「共有された成長」についてのさらなる解明もめざしている。

2003年6月25日

SGRAレポート第14号(中国語版) Posted January 22, 2004 by imanishi
SGRAレポート第14号(中国語版)は、2003年5月30日に東京で発行され中国の研究者に配布されました。

マニラ・レポート Posted January 22, 2004 by imanishi
4月14日から一ヶ月、マニラに帰省した。その間、フィリピンで活躍している日系企業と国際組織を尋ねて、今後の研究のための資料やデータを収集した。秋にSGRAの顧問である平川均名古屋大学教授に研究客員として招聘していただいたので、今回のマニラの調査も参考にして研究を纏める予定にしている。

訪問したのは、富士通、ホンダ、トヨタのフィリピンにある子会社と、日本にその経営が任されたアジア開発銀行(ADB)の本部である。現地の協力者は、以前私が勤めたアジア太平洋大学(University of Asia and the Pacific、UAP)で、元同僚であったピター・ユー博士(Dr. Peter U)が担当してくれた。ユー博士は、多忙中にもかかわらず私の調査依頼を受けいれて、日系企業にアポイントを取ってくれた。企業訪問の目的は、フィリピンにある日系企業が、「共有された成長」という日本が体験した開発方法を、いかにフィリピンで実現しているかを調査するためである。全体的に印象的だったのは、訪問先の皆さんが大変協力的だったことだ。日本人役員の方々が会ってくださるか心配したが、結局、会長・社長クラスの方々が貴重な時間を割いてくださった。追加的なデータも後で送ってくださる。

アジア開発銀行では、いつも私の日本のODA研究に関してアドバイスしてくれる、フィリピンの友人に連絡したところ時間をかけて応対してくれた。ADB本部は私がUAP(当時まだ大学でなく研究所だった)に勤め� �ときには、マニラ湾に面しているところにあったが、今回はUAPの近くに移転したのでずいぶん便利になった。UAPのときの同僚とも偶然出会って協力してくれたのでラッキーだった。二回の訪問で、参考になることを色々と教えてくれた。この調査目的は、「自助努力を支援する」という理念を掲げている、ADBによる対フィリピンの日本ODAの経済学的評価である。

さらに、今回のマニラ滞在中、今年の秋に実施する予定のUAPと名古屋大学とのオンライン授業についてもあらためて確認した。テーマは「グローバル化のなかの日本」に決定した。

以上のプロジェクトは、名古屋大学の平川教授のご支援のもと実施するが、同時にフィリピンでのSGRAの存在感を強化することにも役立つと思っている。訪問先では必ずSGRAレポートを配っ� �、私はSGRAの研究員として臨んだ。フィリピンのような発展途上国で活躍している日本の企業や組織が(他の国のやり方とは違う)日本独自の強いところをフィリピンでもちゃんと生かすことができているかを検証することと、日本に対する正しい理解を深め発信していくことが国際的なNGOとしてのSGRAの役割だと思っている。日本での「失われた10年間」は、海外で日本の強さが見失われた時期でもあったと考えれば、この役割の重要さが明らかであろう。

この場を借りて、滞在期間で協力していただいた下記の方々に改めて感謝の意を述べたい。

Shigeo Tsubotani Fujitsu Philippines, Inc. Chairman & CEO
高野 光成 Honda Cars Philippines, Inc. 取締役 社長
田畑 延明 Toyota Motor Philippines Corporation 社長
永峰 正昭 Fujitsu Computer Products Corporation of the Philippines 社長

フェルディナンド・マキト
SGRA「グローバル化と日本の独自性」研究チーフ
2003年5月21日投稿

李 鋼哲(AAN)「地域協力の中心、狙う韓国」 Posted January 22, 2004 by imanishi
 イラク戦争が現実となり、日々戦火のニュースがメディアを埋め尽くす。北朝鮮の核開発をめぐる緊張を抱える朝鮮半島にどんな影響が出るのか。日本を含む北東アジアの平和と安定が大きく揺らぎかねない。

 韓国は米韓同盟の立場からイラクでの対米支援を決断、反戦の声が高まる中、国会が派兵を認めたが、他方で対北平和解決の道を全力で模索している。

 全文はAANホームページをご覧下さい。

李 鋼哲
SGRA研究員
新世紀アジア人開発研究センター理事長
2003年4月7日朝日新聞朝刊に掲載

SGRAレポート第14号(韓国語版)発行 Posted January 22, 2004 by imanishi
SGRAレポート第14号(韓国語版)は、韓国未来人力研究院のご協力を得て2003年3月31日発行され、同研究員の会員に配布していただきました。

李 鋼哲「イラク戦争を止めろ!!! 民主主義を救え!!! 」 Posted January 22, 2004 by imanishi
アメリカ軍のイラク攻撃は秒読みの段階に入っている。今更戦争を止めろ、といっても止めそうでもない。だからといって、我々は「対岸の火事」を見ているだけでよろしいでしょうか。

 国連の決議なしに単独主義行動で、アメリカなどがイラク攻撃を踏み込んだ場合、世界は第二次世界大戦後の最も深刻な危機に陥ることは間違いないと私は見ている。国際関係を見ると、「9.11」を契機に、世界はポスト冷戦時代の米国中心の「一超多強」世界秩序から、ポスト・ポスト冷戦時代に突入した。一時的な混乱を経て、世界はアメリカ「帝国」の衰退を迎え多極化時代に入るだろう。この転換期に国際社会が直面した危機は深刻である。

 まずは、国際秩序の破壊危機である。戦後国際社会は資本主義勢力� �共産主義勢力との対立が険しいなかでも、米ソ両超大国を中心とする均衡の取れた世界秩序を創った。もちろん、軍備競争や局部戦争は起こっていても、世界は第三次大戦にはならなかった。冷戦崩壊を迎えて、共産主義陣営は崩れ去り、アメリカ超大国が主導するグローバリズムの世界に入った。この秩序において、1991年に起こった湾岸戦争、昨年に起こったアフガニスタン戦争などは何れも国連決議に基づいて行っており、国連の結束と権威が一応保てられていた。しかし、今度のアメリカの軍事行動は、国連の賛成を得られないまま独走し、国際社会の秩序が破壊されてしまう危険性が非常に高い。そうなると、世界は冷静な価値判断基準が乱れることになり、正義と非正義が混沌してしまう。フセイン大統領は「世界各地が戦場� �なる」と宣言し、アラブ世界とアメリカなどとの対立が深まり、「9.11テロ」現象がアメリカを始め世界各地で起こっても不思議ではなくなるだろう。世界世論を背ける今度の戦争で、アメリカはイラクとともに敗者になるに違いない。

 次は、国際的、国内的民主主義の危機である。国際社会において国連中心の体制においては一応の民主主義が貫徹されてきたが、アメリカ単独主義行動の独走に対して国際社会は歯止めをかける力を完全に失ってしまったのを見て、世界の人々は国連に対する強い不信感を抱くことになろう。一方国内では、とりわけイラク攻撃に参加する、またはこの戦争を支持する国々では、民主主義の深刻な危機を迎えざるを得ないだろう。ブッシュ政権、
ブレア政権、小泉政権はいずれもが国民多 数の反対を無視しており、民主主義を踏みにじっている。これらの政権はイラク戦争によりいずれも交替せざるを得ない運命になっていると私は見ている。

 最後は、世界経済が深刻な危機に陥る。国際秩序の破壊、民主主義の危機は直接国際社会に対する経済界の不信感を強め、株価暴落を始め世界経済は大きな危機を迎えつつある。世界の3大経済大国アメリカ、日本、イギリスが国内市場の最大危機を迎えており、それが国際経済に与える影響は甚大である。世界同時不況はさらに深刻になるだろう。

 このような国際社会が直面した危険、世界経済の危機を無視してまで行うイラク攻撃戦争に対して、地球市民としいてのSGRAは何を考え、何を発信すべきか。我々の発信が世界にとっては「茫々大海に投じた一石」に過ぎ� ��、何にも役に立たないかも知れない。しかし、世界には我々と同じように、または我々よりもっと積極的に、ドラスティックに発信し、行動する市民やNGOが千万と数え切れないほど存在している。最近、世界各国で起こっている反戦デモを見てもこれは明らかであり、強まる市民社会の力を示している。

 世界が直面した深刻な危機を転換させるために、我々は自分の声を世界に発信し、我々は自ずと行動を示さなければならない。戦争を止めるために、民主主義を救うために!!!

 今、ブッシュの演説を聞いているが、全く説得力と論理性が見えない。頭が狂っている。

李 鋼哲(SGRA研究員)  
2003.3.18朝10時ブッシュの演説を聞きながら

2003年3月6日 SGRAレポート第14号(英語版) Posted January 22, 2004 by imanishi
 SGRAレポート第14号(英語版)「A New East Asia in the Era of Globalization」2003年3月6日 発行。発表者のヴィレイガス先生と、ガト氏にお願いして、それぞれフィリピンとインドネシアで配布していただきました。

AAN「『アジア人』を紹介します」 Posted January 22, 2004 by imanishi
 AANインターネット版に、李鋼哲研究員が次のように紹介されましたので、お知らせいたします。

■一線から■

「アジア人」を紹介します

 国に過剰に頼ることのないアジア人。中国共産党員としての栄達を未練気なく手放した李さんのような人は、「アジア共同体」を一足先に具現化している人なのかもしれません。

 全文は



These are our most popular posts:

ウルグアイ滞在記

それでも何とか2曲を覚えて、当日は拍手喝采をもらって生徒達は大いに満足したようで した。 ... 街(モンテビデオ)に住んでいても自然の移り変わりにはほとんど無関心な ウルグアイ人、農耕民族と騎馬民族の末裔は互いになかなか理解し合えないもので しょう。 read more

PDFダウンロード - AFS日本協会

AFS生と受け入れ側の人々は互いにどの. ように ..... 交換留学生として海外の高校生の 1学年を過ごすことは、高校卒業後の進路にどのような影響を与えるの .... あの時、受験 を理由に留学を断念しないで本当に良かったと思っています。 ... 隣国のウルグアイにも 支部ができ、現在は AFSアルゼンチン・ ... の留学生が来て、挨拶をしたり話をしたり ... read more

ETメッセージ

メッセージの中にもあるように、この"投票"はいわゆるテレパシーを通じて行われるので、 心の中ではっきりと「イエス」または「ノー」の決断をする ... チェコ共和国、ギリシャ、 マルタ、ペルー、クロアチア、ウルグアイ、 ポーランド、チリ、ルーマニア、南アメリカ、 インドネシア、香港、 ハンガリー、 ... みなさんは、すべての過去を通じて、他の人たちの 貢献によって互いに豊になってきた多くの伝統の子孫なのです。 ... 平和とは戦争を しないことにではなく、みなさんが真の自分になること、つまり同じ仲間になることの中に あるのです。 read more

アルゼンチン - Wikipedia

西と南にチリ、北にボリビア、パラグアイ、北東にブラジル、ウルグアイと国境を接し、東 と南は大西洋に面する。 ... 他にアルゼンティンとも表記され、漢字で亜尓然丁、亜爾然 丁、阿根廷のように表記される。 ... アルゼンチンの最初の住民は、紀元前11000年に ベーリング海峡を渡ってアジアからやって来た人々だった。 .... 内戦の末、1821年に プエイレドンが失脚すると中央政府は崩壊したが、中央政府が存在しないことは外交上 不利であったため、各州の妥協により1825年にブエノスアイレス州が連合州の外交権 を持つこと ... read more

0 件のコメント:

コメントを投稿