2012年4月24日火曜日


Vol. 5
"Educational Aid Partnership from the Perspectives of a Senior Programme Funding Officer"

久木田純氏:ユニセフ・ニューヨーク本部事業資金部上席事業資金担当官。資金調達の仕事を通してドナーとのパートナーシップを推進し、教育を含む社会開発分野への支援を拡大することに尽力している。ユニセフと日本、世銀などとの橋渡し的役割を担い、教育協力をマネッジできる日本人の育成にも貢献。

略歴:
1955年福岡県生まれ。西南学院大学卒。シンガポール大学社会学部留学。九州大学教育心理学修士課程修了、同博士課程中退。国際連合児童基金(UNICEF)駐モルジブ事務所、駐ナミビア事務所、駐日事務所、駐バングラデシュ事務所の勤務を経て、現職。これまで、西南大学非常勤講師、東京大学大学院国際保健学科非常勤講師、1997年には東京大学教育学部で非常勤講師として国際 教育論「開発と教育」などを担当。

著書:
共著に「入門社会開発」(国際開発ジャーナル社、1995)、「援助研究入門」(アジア経済研究所、1996)等。「現代のエスプリ」376(至文堂、1988)で「エンパワーメント」特集を編集。共訳に「マネジメント・開発・NGO」(新評論、2001)。

連絡先:
United Nations Children's Fund
The United Nation Plaza
New York, New York 10017

Tel: (212) 326-7463
Fax: (212)326-7165; (212)303-7967
Email: jkukit

<INDEX>

*上席事業資金担当官という仕事 @ユニセフ・ニューヨーク本部事業資金部 
1.資金調達 −政府系機関(3分の2)と民間支援(3分の1)
2.東アジア・太平洋地域事務所下にあるカントリーオフィス資金調達支援
3.西太平洋、東アジアのドナーからの資金調達と援助協調−日本のケース−
 A.20:20協約の推進
 B.達成度のある分かりやすい支援の推進
4.国際金融機関からの資金調達と援助協力

*ユニセフ事業からみたEFA-FTI
1.援助対象国選定方法の違い
2.実施面の違い −マイクロ、メソレベルの知識と実施能力の不足−
 A.スケールアップの問題 
  −パッケージの改良を怠る−
  −ローカライゼーションに失敗する−
 B.パッケージに含まれない活動への資金がなくなる
3.メソからマイクロレベルでの技術支援をFTIと平行して行う
4.途上国の本当のオーナーシップを育てる支援が必要

*今後の日本の教育協力のあり方
1.世界の動きを慎重に見ること
2.世界の成功例を勉強すること
3.日本とユニセフの協力−IDEALの成功−
 A.初等教育プログラムをマネージできる専門家の養成
 B.成功例を増やし、インパクトのある協力に関わる
4.現場から出てくる経験と信頼関係の活用
 A.スケールアップできるパッケージを作ること
 B.スケールアップのためのマネージメントができること

*GEFAへ� �言
現地の生の声を取り入れて全体を見る

<本文>

本稿は発表者個人の見解であり、所属先、ワシントンDCフォーラムの立場を述べたものではない。

*上席事業資金担当官という仕事 @ユニセフ・ニューヨーク本部事業資金部 

細谷:久木田さんのお仕事について教えてください。

1.資金調達 −政府系機関(3分の2)民間支援(3分の1)

久木田:事業資金部は、ユニセフの中で特に政府系の資金調達を行っているところです。およそ14億ドルの資金がユニセフに流れていますが、そのうち、3分の2が政府系の機関、ビルゲイツや、UN Foundation等の大きな基金、国際金融機関からの資金です。

あとの3分の1は民間、先進国にあるNational Committee からの資金で、これはユニセフの特色だと思います。それは、ユニセフが政府だけではなく、民間の幅広い理解とサポートによって子どもへの支援をしていこうというアプローチをとっているためです。政府系の機関から出る金額は大きいですが、一方ではポリティサイズされてしまう可能性があります。中立的な立場でどこでも活動するためには、純粋に人道支援であったり、子供のためにということで出していただくお金が大事なので、民間からも支援を得るというアプローチをとっています。

2.東アジア・太平洋地域事務所下にあるカントリーオフィス資金調達支援

久木田:事業資金部のなかで、私の地域としての担当は、東アジア・太平洋地域事務所下にあるカントリーオフィスの資金調達の支援、西太平� ��、東アジアのドナーグループ(日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド)、世銀やアジ銀などの開発銀行です。

3.西太平洋、東アジアのドナーからの資金調達と援助協調−日本のケース−

久木田:日本に関してですが、これまで私は長い間ユニセフに勤めてきて、過去二回ユニセフの東京事務所に赴任し、最初から日本からの資金調達にかかわってきました。資金調達だけでなく、協力をしながら、ユニセフを通しての支援の有効性について理解してもらえるよう「マルチバイ」の協力も同時にすすめてきました。

A. 20:20協約の推進

久木田:ドナーにはそれぞれ特徴がありますが、私たちが考えている大きな目的は、日本にもっと社会セクターにお金を出してもらうことなのです。国連が推奨している20:20協約というのがあります。最初の20は、ODAの20%を基礎社会サービスに使うということです。もうひとつの20は途上国の国家予算の20%を同じ基礎社会開発に使っていけば、人間開発の基盤ができ、地球規模の多くの問題が解決できるようになるという考え方です。


それはオーストラリアであることは何ですか?

これは日本で考えられている社会開発と幾分違うんですね。例えば、保健のセクターへの支援にしても、大病院は入りません。教育も大学の医学部や、職業訓練校は入らなくて、初等教育、中等教育も含めて、基礎教育だけなのです。水と衛生にしても、都市の浄水施設は日本のODAカテゴリーでは社会開発に含まれていますが、これに含まれているのは、そのようなインフラではなく、もっと基礎的な井戸水や、ハンドポンプ、低コストのトイレなどです。これらの支援によって、人間開発の基本となるサービスが向上し、MDGの達成そのものに主要な貢献をするだけでなく、経済的な支援の効果性をも高めます。先進的なドナーや世銀なども� ��近はこの方向に動いています。

細谷:学校建設はこのカテゴリーに含まれるのですか。

久木田:学校の建設は基本的には入りません。もちろん、その地域が自分たちでやろうというのであれば、トタン屋根を提供するなど、それに一部支援する資金は入りますが。

この定義で現在、日本のODAのうち実際に基礎社会開発に使われているのは3%から4%ではないでしょうか。これはDACが定義をしていますので、もう少し定義をみる必要はありますが、90年台のはじめ日本は2、3%だったんです。今は少し増えていることを期待して、3、4%といっているのですが。これは、バイもマルチも含めたODA全体に対する割合です。現状では日本のODAは経済偏重が続いています。

問題は経済重視の支援から、も っとバランスのとれたODAにしてもらうというということなんです。途上国のほうも、軍事的、経済的なことに使ったりするだけでなくて、その国の予算の20%を基礎社会セクターに使ってもらうということです。ですから途上国は金額的にはもっと多いわけなんです。日本のODAはGNP比でみれば0.23%というレベルですから、本当に微々たるものです。日本国民一人のODA負担がかりに一万円だとすると今は三百円ほどしか基礎社会開発に使われていないということです。

B. 達成度のある分かりやすい支援の推進

久木田:ユニセフとしては、そのような社会セクターへの支援を増やしODAをさらに有効にしてもらうのと同時に、具体的に日本が支援できて元気がでて、達成度のあるような分かりやすい支援に絞っています。例えばポリオ根絶はすごくわかりやすいですね。これからやりたいのはマラリア対策や、基礎教育の中でも、小学校レベルでの教育の質の改善ということになると思います。

4.国際金融機関からの資金調達と援助協力

久木田:私の仕事の最初の柱が日本などのドナーとユニセフの各国事務所への支援とすれば、二つ目の柱は、国際金融機関です。世界銀行(世銀)を筆頭に、アジア開発銀行、Inter-American Development Bank (IDB)、African Development Bankといった開発銀行が担当です。

世銀とのファンディング ですけれども、これもまた、ファンディングだけではなくて、今一番重要なのは、パートナーシップで、関係性をどうするかということです。ユニセフが世銀のサブコントラクターになるつもりはまったくなくて、一番大切なのは世銀が、先ほども言った20:20のように、バランスよく、基礎社会サービスにお金を使う、子どものためにお金を使うよう仕向けることです。私はユニセフの中で、世銀のパートナーシップ全体を推進すると同時に、ファンディングの話があるときにはその条件や戦略的な意味合いを見極める役割を担当しています。世銀にはマクロでの強みが、ユニセフにはマイクロ・レベルでの実施能力の強みがありますから、その相補的な関係を強力なパートナーシップにもっていくことが重要だと思っています。よ� ��けんかしていた1980年代の構造調整の頃とは世銀も変わってきましたから、お互いにパートナーシップが結びやすくなっています。

*EFA-FTIとユニセフ

細谷:EFA−FTIは基礎教育分野に資金を投入するという点では、ユニセフの目的と一致しているといっていいと思いますが、ユニセフはEFA−FTIとどのように関わりをもっているのでしょうか。

1.援助対象国選定方法の違い

久木田:まず、FTIは援助対象国の選び方が融資条件に見合うかどうか 、つまり、行儀のいい国が中心で、MDGの目標達成のためのニーズ・ベースじゃないんです。もちろん最初のフェーズでこれらの国を中心にやって効果を見せ、その次に第二フェーズでもっと他の国をとしていますが。ユニセフには、去年発表した「25 by 2005」という、2005年までに女の子の教育を推進するために25カ国を支援する取り組みがあるんですが、その選び方はほぼニーズ・ベースなんです。大きな国、問題な国も含めて、2005年までのMDGの最初の関門の達成に向けて、期間は短いけれども、結果を出すようにしたいと思っています。

2.実施面の違い −マイクロ、メソレベルの知識と実施能力の不足−


捨てられた家を改修する方法

久木田:大きな流れからすると、世銀は基礎教育分野にお金を出すようになってきました。ただ現場の実施経験というのは世銀そのものにはほぼなくて、それはだれかにやらせて得た知識なので、ある意味では、マイクロレベルあるいは、メソレベルでの総合的な知識が足りないんです。それに自らの実施能力はありません。マクロレベルでのアレンジとして、FTIをすることによって、ドナーの関心のフォーカスを得たというのはいいことだと思います。しかし、今見ているところでは「実施」の問題が大きくあり、その部分はこれから数年で大きな問題になると思います。というのは、現状ではマクロレベルのアレンジメントに合わせて、マイクロのマネジメント� ��ランを想定してしまう、つまり「青写真」のアプローチになってしまう可能性があって、効果性の高い開発プロセスがたどる、いいものをつくりあげて、それを広げていくという、ボトムアップのアプローチとあわない場合があるんですね。

それでも最近は、そういういいモデルができてきたのを拾い上げて大きな資金を出して拡大実施しようということもやってるんですが、まさにそのときに、問題がおきています。たとえば、すごくいいパイロット・プロジェクトがあって、ユニセフとNGOが一緒に協力して、政府とモデルを作り上げたとしますよね。そうすると、ユニセフの資金でカバーできるのはせめて、その国の10分の1ぐらいでしかないんですけれども、そこに世銀が来て、そのパッケージを買います。

A.� ��ケールアップの問題 
 −パッケージの改良を怠る−
 −ローカライゼーションに失敗する−

 
久木田:それで、二つ大きな問題があって、一つは、そういうものをスケールアップするときに、ちゃんとそれ以前のことを知らない、どうやってそのモデルが展開されてきたのか、最後まで面倒を見るということではなくて、大量生産に持っていこうとするために、パッケージそのものの改善を引き続きやるということができないということです。

それからローカライゼーションで失敗するということです。ローカライゼーションというのは、国内でもそこここにあわせて、あるいはその時々の政府の能力に合わせて修正していかなきゃならないのですが、それができない、ブループリントアプローチだからという� ��ともあり、多くが失敗してしまうんですね。で、結局インパクトがないということになってしまう。

B.パッケージに含まれない活動への資金がなくなる

久木田:もう一つは、Crowding outといいますか、SWAPなどで世銀が陣取りを全部やってしまったために、ドナーの資金が「プール」にしかだせなくなり、他の機関が果たす役割、これまでユニセフやNGOがやってきたこと、特にInnovationの部分や長い時間をかけてのキャパシティービルディング、パイロットテストをしたあともコンポーネントを磨いていく、最終段階で民間や政府にころあいをみながら委譲していく、コミュニティーレベルでの受け入れを高めるような複雑な活動、その他パッケージには含まれていないような活動などへの資金が流れなくなるということです。技術的な援助と同時に、政府や市民社会と「ともに歩いていく」という部分のファンディングがなくなってしまう。つまり、これまではスウェーデンがとか、先進的なドナーがNGOやユニセ� �にお金を出して培ってきたものが、世銀がどーんとドミナントになってしまって、しかも他の北欧のドナーも全部プールファンドに入れてしまったために、ユニセフとしては十分役割が果たせなくなる危険性があるんです。FTIによって、ユニセフがこれまでやっていたよりも大きなお金が動きはするけれども、大事な部分のナレッジベースがつぶれてしまう、育っていかないという問題があると思います。それがFTIの問題だと思います。今はそういう問題は起きていませんがこれからその問題は大きくなると思います。

つまり、FTIとしてたちあげて、どたばたやっているうちにドナーは結果が出てこないということに気づくのです。じゃあ、どうしたらいいかとドナーが騒ぎ出すと思うんですね。ユニセフとして、それ� �問題だと思っていますから重要な会議などでは警告を発していますし、できるだけうまく行くように我々が関係しているところではちゃんとやりたいと思っています。

実施に関しては、もちろんユニセフ一つの機関だけでできる問題ではなくて、どこまでやれるか、実際に見てみないとわからないんだけれど、一方で、FTIが大きく動いて、さっきいったような技術援助の部分を疎んじてしまうということになると、資金の流れもわるくなり、ユニセフが選んだ25とFTIの数カ国がオーバーラップしているところでは、ユニセフが苦労するということはあると思います。

3.メソからマイクロレベルでの技術支援をFTIと平行して行う

久木田:もちろんそういうところでもコーディネーションをやりながら、 できるだけ結果がでるようにしますが、ドナーの中には、DFIDなどプールファンドの他に、パラレルで出してくれるところもあるんですよ。それから日本や米国のように、一緒に出さない、プールファンドに出さないところもあります。そのようなドナーとも提携しながら、大切な部分、世銀ができない部分、メソからマイクロレベルでの技術支援、キャパシティビルディングを平行してやっていこうと思っています。詳しいことは、ウェブサイトで見てください。

細谷:思った以上にコンフリクトがありますね。


ペンシルバニア州で呼び出すことはありません

久木田:そうですね。世銀がマクロの流れを作っていくのは当然ウェルカムだしそこに世銀の強みがあるります。しかし、MDGの達成をほんとにやりたいのなら、彼らはすでに実施能力があって、実施経験があるユニセフのような機関と協力すべきだと思います。ユニセフと世銀のパートナーシップを形成していくチャレンジと意義がそこにあります。

細谷:世銀はリカレントコストの支援が重要だといっていますね。

4.途上国の本当のオーナーシップを育てる支援が必要

久木田:そうですね。しかし、それだけでは結果はでてきません。開発イノベーションのプロセスを最初から最後まで一緒にやってい� ��ことやキャパシティビルディングができません。それは、信頼感をつくり一緒に歩いていくということなんです。緊密に協力しても、甘えさせもせず、筋がとおればあまり厳しくもせず、一緒に達成しながら結果を出すことによってもっと自信と力をつけていくことなんですよね。プロジェクトごとに「契約主義」でお金を出していく現在の世銀の方法ではこれはできません。また、援助の効率化をTransaction Cost をなくすこと、すなわちリカレントコスト以外の重要な技術協力やコーチングを削ってしまえという方法では、結果はでません。温かいけれども、ナンセンスなことはさせない、本当のオーナーシップを育てていく方法を進めなければ、持続もしません。

*今後の日本の教育協力のあり方

細谷:今後の日本の国際教育協力のあり方についてお答えください。

1.世界の動きを慎重に見ること

久木田:日本の果たす役割というのは、そういった世銀の動きも慎重に見ながら、やっていかないといけないと思うんですね。日本にはアメリカの外交偏重、世銀のプールファンドとマクロ・アプローチ、北欧のドナー中心のアプローチの結果もよくみながら本当に結果がでるのかどうか、見ていく必要が あると思うんですよね。

2.世界の成功例を勉強すること

久木田:日本の教育協力というのはこれまで高等教育が中心で、初等教育には本当に出遅れているんだけれども、日本にはいい初等教育の伝統があるので、そういったナレッジベースをつかえるかもしれないですよね。でも世界の今の初等教育の現状というのは日本の現状とかなり違うので、それをそのままつかうというのは注意していかないといけないと思います。それよりも、今世界でやられている成功例をもうちょっと勉強して、それがマネッジできる若い世代をそだてていくことです。このことは日本とユニセフの定期協議の中でも、10年以上話し合われてきました。

3.日本とユニセフの協力−IDEALの成功−

久木田:そのなかで95� ��くらいから、本当に初等教育に日本の支援を増やしていくためにはどうしたらいいかということが話され、一つのモデルとして、バングラデシュのIDEAL (Integrated District ?based Education for All) projectを支援してもらったんです。それはユニセフにとっても最新鋭のプロジェクトで、内容も効果が実証された四つのinterventionを総合的に組み合わせたもので、学習効果の向上、就学率の向上、コミュニティーの参加など、既に実績をあげていました。カナダ・オーストラリア・世銀がユニセフを通しての資金援助をし、アジ銀もこのパッケージをコピーして実施していたので、それに参加しませんかと提案したんですね。それで外務省技術協力課のほうは、1998年にはまずJICAの専門家をこのアイデアルプロジェクトに貼り付けて、日本とユニセフとの協力案件を作ったんです。そこで実際にIDEALの効果を見てもらいました。そしてJICAや大使館の薦めもあって去年、無償課がユニセフを通して3億円ほどの資金を出してくれたので、青� ��海外協力隊、JICA専門家の協力も得て、2つの県でIDEALのパッケージの実施を始めました。

A.初等教育プログラムをマネージできる専門家の養成

久木田:我々が考えているのは、そういう成功体験を日本にしてもらい、そのなかで育つ若い人達が、バングラデシュだけじゃなく、そこからたとえばエチオピア、タンザニアなどに派遣され、協力ができるように、最新鋭の初等教育プログラムのマネージメントに関わっていけるようになってもらうことです。少なくともそこにいて、自分で全てつくることはできなくても、日本とユニセフとの関係あるいは、他のNGOや機関との関係を調整して、日本にあった支援の仕方を考えていけるようなマネージメントの専門家を育成していきたいと思っています。それが� �まくいけば人が徐々にふえていきますから。今のところ、基礎保健分野に比べると圧倒的に日本の教育協力に携われる人数は少ないですね。それは日本とユニセフの定期協議でも毎年出てきたことでしたし、1990年代の半ばに、東工大の牟田先生や、阪大の内海先生と一緒にJICAの開発調査のマニュアルを作った際に、はっきりでていました。

そのためにはもう少し、なんか教えてやろうとか、日本がいい初等教育があるんだからそのままもっていけばいいじゃないか、ということではなく、もっと学ぶ姿勢でやっていくということが大事です。また、連携を深めることによって、それをトレーニンググラウンドにし、学習をはやくし、人材育成していくという方向がいいと思っています。私はバングラデシュにいたときに直接そ� ��モデルケースをつくることになりました。

B.成功例を増やし、インパクトのある協力に関わる


久木田:IDEALはすでに全国の半分の学校をカバーし、2005年までに全国をカバーします。また、スーダンやジンバブウェなど数カ国でモデルとして採用されています。アフガニスタンのプログラムにもこれを導入するとききました。2つ3つのパイロット・プロジェクトや特定地域でうまくいっているというのはあったとしてもこれほどのスケールでの成功例はあまりないんですよ。今後はそういう例を増やしていくということ、パイロットプロジェクトに終わらない、インパクトのある協力をこれから日本が関わっていけばいいなと思います。

細谷:そういう意味でも日本にとっても他の機関との連携が大事ですね。

久木田:そうですね、IDEALに見られるように、それ� �れの機関が強みを出し合って協力し、大きなインパクトを出していくというのが理想的な形だと思います。これは、SWAPでないためにうまくいったケースでもあります。いろいろな開発のアクターがいますから、それをうまく組み合わせることです。たとえば、ユネスコは専門機関として技術的なアドバイスをしますけれども、実際のプロジェクトの形成や実施はユニセフの役割です。今までの現場での実績も大きいですから、そのなかで日本が教育協力を行うのであれば、協力の国際機関をユネスコだけにするのではなくて、ユニセフとの協力を考えてほしいですね。また、世銀や他のドナーの様子も見ながら、協力をしていくという方向がいいと思いますね。

4.現場から出てくる経験と信頼関係の活用

細谷:� �ニセフの中に教育研究者の知見を取り入れるということはありますか。

久木田:ユニセフには教育の専門家たくさんいて、本部にもいますけれど、数から言うと、圧倒的に地域事務所や、カントリーレベルのほうが多いですね。シニア・レベルの人達もたくさんいます。そういった人達がいろんなところで見つけてきたものを集め、戦略的な選択をしていくということになると思います。ユニセフのなかで役に立つ知見は、主に現場からでてくる経験なんですよ。

もちろんそれ以外からも取り入れます。例えばIDEALのように、クラスでの子どもへの教授法改善のもとはMultiple Intelligence Theoryといって、ハーバード大学のハワード・ガードナーの研究を基盤にしています。教室のレイアウトを変えて、楽しく学習効果を高めるようにする部分は、インドのJoyful Learningでの経験が入っています。それら世界的に効果が実証されたものを実際にどうつかえるのか、どうパッケージにして世界中に広めていけるのかというのを見るのがユニセフの仕事だし、そういう効果的なインターベンションをパイロットでやってみて、パッケージ化して、スケールアップまでもっていく、その一連のプロセスに責任をもって関わっていく、そこのところが重要ですから、そのなかで役に立つものは何でも取り入れます。けれども、単なるオブザベーションでは我々には役に立たないので、科学的にも実証できたもの中心に探していくということですね。

細谷:現地でのJICAの成功例をこれからどう政策決定にフィードバックするかが課題だと思います。現地では、成功例も見られるようですので。

A.スケールアップできるパッケージを作ること
B.スケールアップのためのマネージメントができること

久木田:日本の技術協力の問題で今一番のキーポイントは、スケールアップできるかどうかということです。ひとつは、スケールアップできるようなパッケージが作れるかどうか、小さく美しい名人芸のプロジェクトじゃなく、それをナショナルレベルでスケールアップできるようなローコスト、ハイ・インパクトのパッケージをつくり、かつスケールアップのプロセスのマネージメントができるかどうか、その2つだと思います。今のところこれはほとんどないと思います。結果の出せるプログラムのイノベーションをするためにはいくつかステップがあって、最初から最後までのプロセスをどう マネージしていくかという視点が大切です。

* GEFAへ一言

現地の生の声を取り入れて全体を見る

細谷:最後にGEFAの取り組みに対して一言お願いします。GEFAのウェブサイトにも現場の人に参加してもらって、生の声を聞きたいと思っています。

久木田:現場の声を取り入れるということではアイデアル・プロジェクトに日本のJPOが一人入っていますし、JICAの専門家やJOCVの方も関わっていますから、そういう生の声を取り入れれば全体が浮かんできますね。

細谷:ありがとうございました。

インタビューを終えて:

EFAの成功の鍵となる、マイクロレベル、メソレベルで現地のニーズを把握することの重要性を今回久木田氏とのインタビューを通して改めて感 じました。マクロアプローチのEFA−FTIが、マイクロレベル、メソレベルのアプローチであるユニセフの取り組みとうまく歯車があえば、EFA達成の近道となると思います。 

日本の教育協力をマネッジできる人材育成のために、ユニセフや他の国際機関と協力して援助を行っていくことは日本にとって有益であり、今後も継続してパートナーシップを構築し、現地での成功例に多くの日本人が関わっていくことを期待します。



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