栽培方法によるお茶の区分
~育て方が作るお茶の特徴~
●被覆は高級茶のサイン 〜まるで「深窓の佳人」の玉露、碾茶~
新茶の時期、新芽が伸びて一面が萌黄色に染まるお茶畑は、目にまぶしいぐらいの美しさがあります。しかしこのお茶畑の景色とは異なり、黒や茶色など一見異様な光景をみせるお茶畑があります。
茶畑を覆う黒色や茶色は、覆い下栽培に使われる被覆資材の色です。玉露やかぶせ茶は、新芽が出た後、被覆によって葉に届く日光の量を制限し、渋味を抑えると同時に濃厚な旨味を増すように育てられます。
被覆はもともと、新芽を霜の被害から防ぐために始められました。それが、被覆をしたお茶の風味が良いことがわかり、玉露や碾茶、高級な煎茶の作り方へ発展しました。
被覆をして育てるお茶には玉露、碾茶、かぶせ茶、一部の煎茶などがあります。また、被覆にはいくつかの方法があります。
○完全遮光で育てる玉露、碾茶(抹茶の原料)
新茶シーズンの前に、茶園をすっぽり覆うように「棚」を組んでおく。本葉が2~3枚伸びた頃から摘採の日まで「よしず」、「稲わら」や「こも」で覆う。
遮光率55~60%で10日、95~98%で10日、計20日。あるいは、遮光率90%で15日。
○簡易な遮光で育てるかぶせ茶
玉露や碾茶と同じような「棚」を使う場合と、黒色の寒冷紗(かんれいしゃ)などの被覆資材を畝に直接被せる場合とがある。棚を使うのは主に、手摘み用に茶樹を高く仕立てている場合。
遮光率55~60%で7日~12日程度被覆。
日差しをブロックして、美しい色と旨味の多いお茶に育てるなんて、私たちの美白と似たところがあるわね。
●かまぼこ型のほかにもあるお茶畑 ~茶樹の形に見える味わいや手間~
よく知られたお茶畑のイメージに、かまぼこ型の畝(うね)が並ぶ景色があります。この畝は、チャの苗木を列状に植え、育ってきたところで、枝を選定して形作ります。各地の茶畑を観察すると、かまぼこ型にもバリエーションがあり、それ以外の形の茶の木を発見することもあります。
茶樹の形の違いは、作ろうとするお茶の違いでもあり、特に、摘採に用いる道具の違いでもあります。ここでは、摘採方法と、茶樹の形の密接な関係をご紹介します。
○手摘みの茶園 ~品質重視のお茶のために~
枝が自由に伸びたように見える茶園は、自然型仕立て、自然仕立てとも呼ばれる。茶樹本来の力をいかし、品質の良いお茶を作るときの仕立て方で、摘採は手摘みとなる。
手摘み園は、1mを超える高仕立て、75cm程の中仕立てが多い。
通常は一番茶だけを摘み、その後大きく刈り込んで、1年をかけて次の芽を育てる。玉露、品評会クラスの高級な煎茶などが作られている。
○機械摘みの茶園 ~日本の一般的なお茶畑の形~
摘採機を使い、効率よく摘採などの作業を行える茶園。私たちが普段飲んでいる煎茶、ほうじ茶など、日本茶の多くがこのタイプの茶園で作られている。
畝の間隔、形、樹高等は、使用する摘採機に合わせて整えられる。形は、お馴染みのかまぼこ型でも、半円のぽっこりしたもの、カーブの緩やかなもの、上部が水平の角刈りタイプなどがある。樹高は中仕立てから高さ30~40cmの低仕立てにまたがる。
平坦な茶園では乗用型摘採機の導入が進み、茶樹は水平または水平に近い緩やかなカーブで揃えられている。
かまぼこ型の畝が連なる茶園では、主に、可搬型の摘採機が使われている。可搬型摘採機は、平たん地から傾斜地まで利用が可能。傾斜地の畝は、斜面の向きと等高線を意識して形成されている。
今度お茶畑を見つけたら、その形を観察して、どんなお茶が作られているか想像してみるわ!
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●環境にやさしく、安心なお茶~有機栽培・特別栽培のお茶~
チャの木も他の農作物と同じように、病害虫による被害を受けることがあり、土壌改良や防除が行われています。
近年は環境配慮型の栽培方法の研究も進み、環境にやさしい農業、自然の力をいかした栽培を実践するお茶農家も増えてきました。有機質肥料を使って土づくりに特に力を入れる、化学合成された肥料や農薬の使用を減らす、天敵を使って害虫を減らす、手間をかけて世話をするなど、農家の知恵と最新の科学技術でお茶が作られています。
ここでは、最近見かけることが増えた有機栽培(オーガニック)と特別栽培の農産物についてご紹介します。
○有機栽培農産物
日本では、JAS法によって有機農産物の認証と表示について定められており、お茶にも適用されている。有機栽培のお茶は「有機栽培茶」と表示されることがある。
○有機農産物の規格
お茶のような永年性作物では、化学合成された肥料、土壌改良剤、農薬を、収穫前3年以上にわたって使用していないこと。周囲の畑から、化学肥料や農薬の飛散がないように区分されていること。収穫後の輸送、選別、調製、洗浄、貯蔵、包装等の工程で、有機農産物以外の農産物と混ざらないようになっていること。などが定められている。
有機農産物加工食品の場合は、加工原料のうち、水と食塩を除いた重量の95%以上が有機農産物で、加工において放射線照射をせず、有機農産物以外のものとも混合されないように管理されていること。例えば玄米茶では、茶葉も玄米も有機農産物なら、オーガニック玄米茶と表示できる 。
○「有機」の認定と表示
有機農産物、加工食品のJAS規格に適合しているかどうかは、国に登録された機関が検査を行う。
適合していると認定された事業者のみが「有機JASマーク」を貼ることができる。有機JASマークがない農産物と農産物加工食品に、「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示をすることは法律で禁止されている。
○特別栽培農産物
産地の慣行的な農薬と化学肥料の使用状況に比べて、節減対象農薬の使用回数と、化学肥料の窒素成分量がそれぞれ半分以下で栽培された農産物を指す。
特別栽培農産物には、農林水産省新ガイドラインによる表示が付けられる。
※節減対象の農薬を使用しなかった場合は「節減対象農薬:栽培期間中不使用」と表示。
※「無農薬」「無化学肥料」は、その農産物に一切の残留農薬等を含まないとの間違ったイメージを抱く可能性があることから、表示禁止事項となっている。
※「減農薬」「減化学肥料」表示は、減らしている比較基準、割合やび対象(残留農薬か、使用回数か)が不明確なため、表示禁止事項となっている。
正しい知識で、自分の好みや関心に合った商品を選べる、賢い消費者を目指すわ!
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